授業課題

有吉静香

宮沢賢治『銀河鉄道の夜』

私は宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』を読み調べていくうちに作者自身の宗教観に関することが強く現れているように感じました。
亡くなってしまった人たちが乗り込む鉄道に主人公が乗り合わせ旅をするお話で、乗り込んだ人が「ここが最上の場所」といって下車する場所は別々で、また会話をした兄妹と各々にとっての神様について意見がすれ違うシーンがあります。親友のカムパネルラが「あそこが天上の地だ」といって指した場所が主人公のジョバンニにはもやがかって見えたりします。それぞれの認識のズレを表していると感じました。
宮沢賢治は自分の家族や親しい知人と宗教観の違いでうまくいかなかったり関係性を断つなどしており、「自分の信じる神様」というものに対して少なからず悩んでいたように思います。
今回は標識をモチーフに制作しました。実際に物語の中で標識という単語がでてくるわけではないですが、登場人物がそれぞれの天上の地に降りていくということが印象的で標識を作りました。標識ではありますが、これは本です。この物語で私が一番強く感じた「自分が信じるものは必ずしも他者にとってそうではない」ということを、「本は冊子状になったもの」という枠を取り払うことによって再現しようと試みました。
物語の中で列車は南十字に向かって進んでいきます。この作品の輪郭は捉えづらくありますが、南十字をベースに形をぼやかし一見しただけではそれに気付かないようにしています。
透明にしたのは、それが形のないものの現れであると思ったからです。それぞれの理想を投影する器を表現しようとしました。

宮沢賢治『銀河鉄道の夜』



新波文庫ポスター

本を読むのはそれが何であれ何かを得たいという欲求のひとつを満たすための行為だと考え、「本とは何かを得るためのもの」というコンセプトを設定し制作しました。「ページを開き広がる世界から何を読み取るのか」をイラストで表現しました。

新波文庫ポスター



『SURVIVE』(グループ作品)

制作者:有吉静香、金子さえ、齋藤桜樋口花也野山口拓(五十音順)

無線綴じを主力とする製本会社の社内ポスター。私達はこのポスターの制作にあたってその目的を「業界に対する不安感の払拭」「社員の方々への鼓舞」としました。
他社では難しい厚みのある製本が可能であるという強みを持った会社であったので、その特徴と製品としてのクォリティの高さを表すために、迫る製本業界への危機(デジタル化)という敵の弾丸をその製本会社の無線綴じ本で受け止め立ち向かっていくガンマンという構図で表現しました。漫画が好きな社員の方が多くいらっしゃると伺っていたので少年漫画のように熱くワクワクするようなビジュアルを目指しました。
印刷についてはシルバーの紙にホワイト・ブラック・ニスの3色を載せています。印刷に拘ることによってモノ感が出るようにしました。写真部分は網点の加工(ドット)を施し、漫画で使用されるスクリーントーンを意識しています。

『SURVIVE』 制作者:有吉静香、金子さえ、齋藤桜、樋口花也野、山口拓(五十音順)
有吉静香
2014年 三重短期大学法経科第1部 卒業
2021年 桑沢デザイン研究所専攻デザイン科 卒業

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