副葬品『shinobu』

中里友美

副葬品は最後の贈り物

突然ですがあなたは「副葬品」をご存知ですか?
副葬品とは、亡くなった方の棺に入れ一緒に出棺するものの総称です。六文銭に代表されるように故人があの世へ行く際の携行品という考え方もありますが、同時に副葬品は遺族が故人にできる最後の贈り物でもあります。しかしこの副葬品は、火葬が一般的な日本では環境保護の観点から「燃やせるもの」しか入れることができません。故人の愛用品であってもその多くの現物はプラスチックや金属を含むために棺に入れることができないのです。

「shinobu」はそのような悩みに応えるべく生まれた紙製の副葬品用のイミテーションです。紙でできているため棺桶に入れられることはもちろん、自由に着彩し故人とご遺族の思い出の形に近づけることもできます。また、原料にはCO2排出量を抑えた再生紙を用いており、環境への考慮もなされています。

副葬品の制限をなくすことで故人とご遺族の思い出がより一層素敵なものになりますように。故人への最後の贈り物にぜひshinobuをご利用ください。

故人の好みに合わせてカスタムすることができます

副葬品の制限は誰しも直面し得る問題

大学3年の冬、祖父が亡くなりました。陽気でマイペースな人で最後まで笑顔だった私の祖父はゴルフが趣味で、お酒が好きで、いつも同じ眼鏡をかけていました。葬儀の際、棺桶にゴルフボールやお酒のボトルなどの祖父の愛用品を入れてあげたかったのですが、それらはどれも燃やすことができずこれは叶いませんでした。
後になってふとこの話を周囲にしたのですが、返ってきた言葉は「そういう経験私もある」、「心残りとして今もある」という言葉でした。
人は、必ず死にます。これはつまり、誰もが見送る側(遺族)と見送られる側(故人)になるということです。そして火葬が主流であるこの日本では副葬品について私と同じやりきれない想いをした人がきっと他にも沢山いるでしょう。
しかしこれはデザインの力で解決できる問題なのではないか、これがこのデザインの出発点です。

本当のサステナビリティとは

このデザインについて「紙とはいえ燃やすものを増やす行為は環境問題への配慮に欠けるのではないか」という意見もあると思います。これは的を得た意見で、私自身もこの点については制作中よく考えました。しかし同時に「人間の感情の落とし所にも考慮されて初めてサステナブルと言えるのではないか」とも思います。環境問題のみを気にするのであれば一番良い選択は人類が滅びることですが、それは実現不可能な未来です。不平不満が多く募る方法はきっと持続可能とは言えません。葬儀には人を見送る、人と別れる遺族の悲しみを慰める意味もあると私は考えます。そしてそれが環境に配慮されながらも一番いい形で実現できるよう、今回のデザインがその一助になればと願っています。

モデル協力
小島彩花
宮根土真砂

中里友美
東京都生まれ。
2016年学習院大学法学部卒業。
民間企業に特定総合職で入社し2017年退社。
2021年桑沢デザイン研究所卒業。

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