一つの出会い、無限の未来

伊東令奈


三つの色彩で描く、三つのストーリー

三列のイラスト、それぞれ背景の色やデザインは違いますが、全体的にタイ・インドなどのアジア系の雰囲気で統一しています。
これは私が渋谷に通っているうちに、アジア雑貨・ファッションを扱っているお店に出会ったことが関係しています。
このようなデザインは今はメジャーではなく、自分の生まれる前に流行ったようなもので、目につくこともあまりなく桑沢に通うまでは何なのかよく分かりませんでしたが、自分の作品にもその雰囲気を入れてみたいと思うようになると、今まで描いてきたものに新たな視点が見えてきました。
この出会いは、私自身を変えてくれたと思います。


イラストの内容は
「人生の中で大切な一人との出会いをしたことで、前を向き自分のしたいことを出来るようになった二人」という共通したストーリーを、三つのオムニバス形式で描きました。

今回描いた三つの出会いには他者から語られる形式のストーリーを付けています




⒈緑色の青春を描く


二人の共通の友人 からの話

あいつらのことならよく知ってるよ。俺も漫画好きだから。
黒髪のヤツが前までは暗くて隅で漫画読んでるようなヤツだったんだけど、変な髪色の漫画好きの転校生が来てから、二人で漫画の話をよくするようになったらしい。
今では暗かったあいつも笑うところを見るよ。
でもまさか俺とも漫画の趣味が同じだったなんて思わなかった!

どうやら最近は二人で漫画家を目指してるとか……
昨日も休み時間に漫画を練ってた。
二人とも漫画好きとはいえ、よくやるよな。
今は漫画オタクの宇宙人の話を描いてるのを見たよ。確かに転校生は変な髪色の漫画オタクだけど…実話じゃないよな?




⒉黄金色に輝く初舞台


演技一輪車講師 からの話

あの髪の長いお嬢さんは、うちの教室にも通っていたことがあって、とても優秀で演技一輪車大会の1位の常連なんです。
演技一輪車について知っていますか?普通の一輪車とは違う白い一輪車でスケートみたいにスピンしたり、立って乗ったり、音楽に合わせて舞うんです。とても綺麗なんですよ。
やってる人は少ないし、一般用の資料もあまり無いものです。

お嬢さんが1位を何年も連続で取ったあと、大会に出なくなり、うちの教室を辞めたいと言いました。
もう飽きて他のことがやりたいのかと思いきや、公園で男の子に一輪車を教えている姿を見たんですよ。
年下でハーフで貧乏な子と言っていました。

男の子は、公園で練習していたお嬢さんを見てから同じ演技一輪車をお小遣いを全部使って買ったそうですが、やり方が分からなかったそうです。
それからは私も二人を見かけたら少し教えることにしました。

それから……お嬢さんはまた演技一輪車大会に出るようになりました。
ソロではなく、教えていた男の子と一緒にペアの部門です。
綺麗なドレスと新品のスーツをはためかせ、息の合った演技でしたが、3位でした。
1位に比べたら低いですが、男の子は泣いていました。私もつい泣いてしまいましたね。
そして、抱きつこうとするお嬢さんを一生懸命止めていました。伸び代のある二人の成長が楽しみですよ。



⒊紫は繋がりの色


同じ学年の友人? からの話

なんで俺に聞くんだよ。知らねーよ、あいつらのことなんて。
いじめてたから?バカ、あの天パは前は小さくてナヨナヨしてたけど、今じゃデカいんだぜ!?縮毛矯正したのかなんなのか髪も長くしてたけど、前のナヨナヨ感がなくなってて、いつ仕返しされるか分からねーし……

メガネの女はマジ気が強くて一発ぶちのめされたことあるんだよな。
そのあとからだな、あいつらが仲良くなってたのは。多分俺がいじめてたのをメガネ女が助けたから仲良くなったっていう…… うわ、俺、余計なことしたな。
付き合って…んのか?知らねーけど

陸上部の先輩 からの話

よくメガネちゃんから部活中に話を聞いてたなぁ。
メガネちゃんはお母さんが厳しくて、喧嘩とかやめて女の子らしくしなさいってよく言われてたみたい。
常に鋭い目で周りを見てたけど、寂しそうだった。だから私は部活後に一緒に下校とかしてたんだ。

メガネちゃんが部活に来ない日があって、そのまま帰ろうとしたら、校門にちょっと怪我してるメガネちゃんが男子を連れてた。そんなに大きくないメガネちゃんと同じくらいの身長で、タオルを被ってた。
水をかけるいじめをされてたのを助けたんだって。
それから二人はクラスは違うけど仲良くなってて、部活中に見に来たりしてたよ。
メガネちゃんも前みたいな鋭さはなくなってて、もう大丈夫かなって思った。

数年後、二人が私と会いたいって言うから一緒に遊ぶことにしたんだ。
すごくフワフワで女の子らしい子が来たからメガネちゃん変わったなって思ったら…… あの時の男子だったみたい!
メガネちゃんの方はバッサリ髪を切ってて、とても似合ってた。
二人とも、なりたい自分があったんだね。私にも言えないくらい。
でも二人同士なら話し合えて、変われたのかな。
そのあとは私にお世話になったお礼ってことで、後輩なのにおごってもらったりしちゃった……そんなのいいのに!

伊東令奈
神奈川県生まれ。
2021年桑沢デザイン研究所卒業。
神奈川から渋谷に通うのは遠かったが、渋谷は好き。

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