2020

太田晴子

アクリル絵 ( H728 × W1030 ) 2点

2020年を振り返って

この一年は確実に歴史に残り、今をまさに生きる私たちの記憶にも深く刻まれる一年だったと思います。悲しいことに、街はマスクだらけで一つ咳やくしゃみをすればキツく睨まれたり、余裕のない時に表れる心の醜さが見えたり、薬局やテレビのニュースや医療関係者たちなど、社会はストレスや疲労の限界を超え、地球全体がパニック状態になってしまいました。
こんなことあるんだとコロナを知ったばかりの当時の私は、非現実的な体験をしているような、テレビの中で起こっている出来事を見ているような感覚でした。

しかし、学校では新学期の授業の開始が遅れ、授業が開始されても、小中高生や社会人は通勤・通学している中で、私たち専門学生や大学生たちは家でじっと自粛し、オンラインで授業を受けるようになりました。
正直、最初は休みが増えるし通学時間もなくなり嬉しく思いもしましたが、コロナ禍で人と会うことも少なくなって、家でひとり過ごしていると、会話もなくて孤独感や不安を感じたり、社会が混乱して情報が錯綜し、みんなのイライラを感じるたびに心がどんどん萎んでいくように感じました。
それを感じたからこそ、同時に、今までの日常のありがたさや人とのつながりに支えられていたと強く実感し、気づかされました。

気持ちが沈んでばかりの出来事だけがこの一年であったのではなく、変わらない穏やかな日常がありがたかったことや、大切なことってなんだっけ?と立ち止まって見つめ直すことができたり、緊急事態だからこそ助け合い、支え合おうとする人の温かさに気づけたり…大切な期間であったことも確かだと思います。

この一年で起きた自分の身近な問題やこの想いを、何年か経ったらいつの間にか遠い薄い記憶になってしまう気がして、そうじゃなくて、自分にとって様々なことがあったこの一年を、ちゃんと憶えておきたい、残したいと思い、きっと多くの人にとっても自分にとっても、大きな出来事である「2020」というテーマを選んで絵を描きました。

顔のまわりに敷き詰められたイラストや文字

今の私の表現

昨年は、具体的にどんなことがあったのか、どんな感情が世間や身の回りにあったのか。
顔の周りには2020年に感じた、自分自身や世間、身近な人たちの様々な感情や考えを敷き詰めています。

赤い絵は、今までの暮らしのありがたさや、心を豊かにしてくれた物事、人との繋がりや温かさを感じたことや出来事などを。
青い絵は、コロナによって交流がないことへの孤独感や不安、周囲で感じたイライラ、自由を制限され当たり前の日常が送れないことなど、マイナスな感情が渦巻いている様子を表現しています。

人の感情や社会で起きている出来事は複雑で、この作品で「プラスなこと」と「マイナスなこと」というように二つに分けても、この二つは紙一重だと思うし、二つに分類できないこともあります。
なので、中央に大きく描く顔の表情は他の感情も混ざっているような表情を描きたくて、そして、周りに描くものはたくさんの感情や起きた出来事が頭の中で密集しそれ同士が絡まったり、重なっているようなイメージで描きました。

不気味に感じる人が多そうな、大袈裟に誇張された表情は、きっと数年後の私にはできない、今だからこそできる表現で、2020年22才の自分も、今までの集大成として作品にこめたいと思い、この表現で作品を作りました。

見てくださった人の中に少しでもこの作品に引っ掛かりを感じて、また、これまでを思い出すきっかけになれば嬉しいです。

太田晴子
愛知県にて誕生。
0歳で愛知を離れる。
転勤族の一家に誕生したことの宿命で転校を繰り返したが、都道府県の各地に友達がいることについては密かに誇っている。
2021年桑沢デザイン研究所卒業。

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