粧彩 - shosai -

松澤幸

「石膏像に化粧を施し、彩る」

石膏像はデッサンによく使われるものですが、実はその石膏像それぞれに歴史があります。
それでは、彼女らの歴史を紹介します。



ミロのヴィーナス【Vénus de Milo】

ギリシアのミロ島で発掘されたヴィーナス像。両腕がないにもかかわらず世界中から美しいと言われています。この彫像が本来どのような姿であるのかということは、長い間議論の的となっています。しかし、一説によると「黄金のリンゴ」を持っていたのではないかと言われています。そんなミロのヴィーナスは「美の女神」と呼ばれる一方、「愛の女神」とも呼ばれています。ミロのヴィーナスには、色んな生命が誕生する「春」というイメージやたくさんのものを生み出す「母」というイメージがあるそうです。


「美」や「母」、「春」という言葉から、ミロのヴィーナスは優しい顔をした女性だと考えました。その中でも「春」や「愛」を連想させるピンクを基調としたメイクを施し、ナチュラルなメイクに仕上げました。


ベレニケ【Berenice】

パジャントとも呼ばれています。1999年以前はバシャントまたは、イシスと呼ばれていたことがわかっています。パジャントはこのバシャントが変化したものだと推定されています。ルーブル美術館の目録ではベレニケと呼ばれていることから、正式名称はベレニケ。ベレニケとは、一般的に古代地中海にみられた女性名で、とくに古代エジプト・プトレマイオス朝の女王・王妃を指します。複雑に編み上げられた左右に垂れ下がる髪型が特徴的で、これはアフリカ系のリビア人を表す図像とされています。


実はお馴染みの「クレオパトラ」は、同じ古代エジプト・プトレマイオス朝のファラオであることがわかっています。クレオパトラは、目を強調させたメイクが特徴的。パジャントもそういったメイクが似合うと思い、全体のメイクを濃く仕上げ、顔のパーツを強調させることを意識しました。



アリアドネ【Ariadne】

ギリシア神話の登場人物アリアドネ(アリアス)は、古代ギリシア世界のクレタの王ミノスの娘。アテネの王子テセウスがミノタウロスを退治するくだりに登場します。ミノス王の娘であったアリアドネはテセウスに恋をしてしまい、怪物退治の手助けをします。(赤い糸を結んでおいてミノタウロスの迷宮から脱出に協力)その後、2人は駆け落ちしたが、アリアドネはナクソス島で置き去りにされてしまいます。その後、一説によるとディオニソス(ギリシア神話に登場する豊穣とブドウ酒と酩酊の神)という男性と結婚しました。


結局、本当に好きな相手とは結ばれなかったアリアス。そう思うと、泣いているように見えます。そんな悲しそうで寂しそうな表情をメイクで表現するため、ラメを使い涙に見立て、寒色系のカラーでメイクを施しました。



真っ白で一見生命を感じられないない石膏像ですが、彼女達ひとり一人に合った化粧を施し、彩ることで命を吹き込みました。
 
さて生命を吹き込まれた彼女達は、自らの歴史をどのように語りかけてくれるのでしょう。

松澤幸

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