はじまりの箱

羽田楽太郎

はじまりの時間を彩る

一見すると木の立方体。これは同じ形をしたコの字型のスツール兼座卓が2 つ組み合わさっている。内部には全長170cm のクッションが計4 つジャバラ状に仕込まれていて、座布団やマットとして使用できる。シンプルな形態でありながら、フレキシブルに使えるエレメントを目指した。

我が家には自分の部屋がなく、狭い一部屋を弟妹3人で共同で使っているのだが、身体が成長して大きくなるにつれ、お互いに息苦しさを感じるようになった。そこで、庭の一角にツーバイフォー構法で4畳半の小屋を建てて、移住しようという計画を思い立ち、2年ほど前から工事を進めている。1 つだけ窓を取り付けたもののそれ以外はただの開口部。雨風や落ち葉、虫は容赦無く侵入してくる。ひんやりと冷たい床、断熱材の入っていない壁、ここはまだ、ただの“空間” でしかなく、“居場所” にはなっていない。当初は寝床や作業机を設けて移住しようとしていたけれど、時の流れは思った以上に早く、小屋の完成よりも先に僕が家を出て行くことになりそうだ。

今後、この小屋で誰がどのように過ごすかは分からない。ならば、いつか始まる小屋での時間のはじまりを彩るような家具を作りたい、そう思い「はじまりの箱」をデザインした。

12ミリ厚の板の小口を斜め45度にカット、ただし3ミリのみ垂直部を残した。板を組むと接線が入り隅になる。入り隅に塗装を施すことで立方体の12辺が際立ち、形態がよりシャープに現れてくる。また、辺の色をわずかに変えることで、遠目の印象は統一しながら、スライド方向が分かるようにした。

羽田楽太郎
2000年神奈川県生まれ。
2022年桑沢デザイン研究所スペースデザイン専攻卒業。

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