授業課題

矢野優奈

しるべ / 神棚

例えば嬉しい時、辛い時。誰かにはなしを聞いてほしい時がある。人は話すことで自分の気持ちを整理することができる生き物だから。話しかけるには、対象が必要だ。それは、人ではなくとも思い入れのある物に対して行うこともあるだろう。
「しるべ」は祀ったものを通して自分と対話し、自身の道しるべを見つけるための神棚である。

「しるべ」は漢字で書くと、「導」または「標」である。

『いま、ここにいない人を想い、語る。』

お爺さんの懐中時計、お母さんの髪留め、娘が作ってくれた折り鶴、 孫が拾ってきたきれいな石…。
その人を感じるものは、思い出の数ほどあります。遺品は最たるものでしょう。
物を通して、その人の存在をわたしたちは感じます。側にいなくとも、嬉しい時、辛い時、その人へ話しかけたくなる時もあります。

「話しかける」には対象が必要です。
その人を感じる物を通し、近くにいないその人へ、話しかけることはごく自然なことだと思います。

人は話すことで気持ちを整理することができます。
じぶんと対話することで、道しるべをじぶんで見つけることができるのです。


『たくさんの、神様。』
日本人は「無宗教」民族とも言われていますが、八百万の神様という信仰がベースとしてあるため、歴史の中で様々な宗教や文化を受け入れている、おおらかな民族といえます。

近代化に伴い、ここ100年で大きく生活様式や文化は変わってきました。

では、生活の中にある神棚は普遍なものなのか?普遍な部分はどこであるのか。
あたらしい生活様式に合わせた神棚を、提案します。

【かたちの意味】
いままでの神棚にあった白木造りのクラフト感あるイメージをかえつつ、近代化した生活様式にあうモダンな印象となるようあえてプロダクト(大量生産)然とした佇まいを目指しました。カラーは真っ白/真っ黒は宗教や縁起的な意味合いが出てしまうため、グレートーンを基調としています。

[台座] 床を上げた神社建築様式のイメージを取り入れ、やわらかな曲線で雲の上の神さまをイメージしています
[鳥居] 鳥居は結界の役割を持ち、大切なモノを守り、あなたを守ります。台座に直接挿して固定します。「明神式」「神明式」の二種類からお選びいただけます。
[灯籠] 人感センサーで70cm以内に近づくと、やわらかに灯ります。灯ることで、対話が通じている感覚を利用者に引き起こします。裏フタ内にボタン電池、LED電球、裏フタ外にセンサーが配置されています。
[三宝] 円形で円満を、ひょうたん型で厄除けを願います。色は光沢のある鉄紺。「低型」「高型」の2種類からお選びいただけ、祀るあなたの大切なものを引き立てます。



torus chair / 家具と空間の境界を超える椅子

Torus chair(トーラスチェア)は、ひと繋がりのパイプで立体を構成しています。インドア/アウトドアファニチャーそれぞれの持つ印象を抽出し、物体としてのボリューム感と、風を通し持ち運べる構造を両立させました。

プロトタイプボリュームモック。なまし銅管Φ8を約30m使用。
畳んで持ち運ぶことが可能。Φ450mm。

参考
・茂木貞純 『世界でいちばん素敵な神社の教室』三才ブックス (2019/1/25)
・MdN編集部 『月刊MdN 2016年 2月号(特集:神社デザイン)』 エムディエヌコーポレーション; 月刊版 (2016/1/6)
・神社本庁 『神社のいろは 神社検定公式テキスト 』 扶桑社 (2012/2/10)
・茂木貞純 『神社のどうぶつ図鑑』 二見書房 (2018/10/26)
・トーラス結び目
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%A9%E3%82%B9%E7%B5%90%E3%81%B3%E7%9B%AE

矢野優奈
愛知県名古屋市生まれ、東京都八王子育ち。
2019年桑沢デザイン研究所基礎造形専攻 修了。
2021年桑沢デザイン研究所プロダクトデザインコース 卒業。
7年間ITエンジニアとして従事し、在学中にデザイナーとして転職。
趣味はキャンプ/テレビゲーム/リトルカブでツーリング。

プロダクトデザインはトライアスロンのような複数の種目の総合力が必要とされ、それがまた面白いです。やろうと思えばどこまででもやれる。
いろんなことを自分ごととして捉えて、如何に楽しみ、意義を見出して取り組めるかで、物事の、とくに桑沢での時間の密度は変わるなと感じました。

Image View

List View

Students
Archive

Image View

List View