授業課題

小柳水樹

劇場の一日

絵本で体験する小劇場の世界


全90ページ、くるみ製本。

三好十郎の『浮標(ぶい)』という作品が上演されている、とある劇場の一日を「観客/劇場スタッフ」の2つの視点から、時系列を追って楽しめる絵本を制作した。
劇場で配布される公演のチラシやアンケート、チケットなどの現物もページの間に挟み込み、劇場に足を運びにくい現在の状況の中でも、実際にその劇場を訪れているかのような体験を味わってもらいたい。

全ページの動画
小劇場ならではの風景。
実物のチラシやチケットが挟み込まれている。

ブックインブックで『浮標』を紙面上演。海辺の物語なので、砂浜をイメージした紙を使用。折り目を開くと、舞台裏の様子も描かれている。

   



長崎のアーモンド菓子
「PARAISO」
ブランドパッケージ

教会の温もりを表現したパッケージ

長崎のカトリック系修道会で手作りされた洋菓子や雑貨類を一般向けに販売するブランド。
ぱらいそとはパラダイス=楽園のこと。シンボルマークのモチーフは『平和』を象徴する鳩と、『長崎』を象徴する椿の花。
デザインコンセプトは「教会の温もり」。史学部でキリシタン信仰について研究していたためこの題材を選んだ。静かな佇まいでありながらも目を引くデザインを目指した。

長崎の教会群を思わせるステンドグラスを前面に配置。そこから中身が透けて見える。

   



沖縄の伝統的な玩具

琉球張子は親が子供の健やかな成長を願って与えたおもちゃ。造形はユーモラスで表情豊か。南国の風土を写しこんだようにカラフルで、独特でゆるかわなモチーフが特徴的。現在も制作され、老若男女に愛されている。親/子供の視点で2点制作。紅型模様や母親の服装、髪型で沖縄らしさを表現した。




文化系オタクの桑沢生活

大学は史学科だったが、広告系のサークルで様々な団体の広報物を作成した。主に文化的イベントの依頼が多かった。(能楽、古墳、書道、仏教行事など…)
一見とっつきにくいように思われる題材をいかにグラフィックとして新鮮に・魅力的に見せるかを考えるのが毎回楽しく、実際良い反響をいただいた。

数年の社会人生活を経て桑沢に入った。
この2年間はデザイン史という巨山の営みを知り、「貴方が美しいと思う造形とは何ですか」と延々問われる日々だったように思う。自分はこれまで造形美よりも知識の蓄積ばかりを追求してきたので、使ってこなかった筋肉を鍛えなければならなかった。
しかしだからといって授業や課題を「嫌だ」「苦しい」と感じたことは一度もなかった。社会状況が変化しても、手を動かしていれば気持ちが落ち込むこともなかった。
卒展にたどり着いた今、自分の中のものの見方や関わり方の引き出しが増えたことを実感している。

でも、根はやはり人文系への好奇心が強い人間なのである。文化芸術歴史の必要性が問われる社会状況の中で、それらの必要性や魅力を改めて発信できるようなデザインを、これからも模索していきたい。

絵本「劇場の一日」は武田英里子との合作。

引用:三好十郎『浮標』青空文庫より

小柳水樹
執筆・編集・デザイン

福岡県出身 / 1994年生まれ / 女性
史学科で学びつつ、広告系のサークルで広報物を制作。
卒業後はITベンチャーで医療系サイトを運営。
趣味:観劇・映画・歴史

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