紡ぐ家
-ことばを通して人や自然、地域とつながる場所-

齋史歩

上:全体俯瞰 下:緑道から見た全体外観と内観一部

「詩(ことば)」をテーマにした併用住宅

世田谷区・北沢川緑道の一角に、「詩(ことば)を楽しみ、詩(ことば)を通して人や自然、地域との繋がりを感じる併用住宅」を計画した。

敷地リサーチから、敷地周辺は緑や川など自然が多く閑静で、萩原朔太郎や斎藤茂吉など様々な文学者の旧住宅跡があることがわかった。しかし、今現在そのような文学的な活動や交流が行われる空間は地域には少ない。そこで、文学の中でも比較的誰にとっても親しみのある「詩」をテーマにした施設を併用する住宅計画を試みた。 SNSなどで誰でも簡単に言葉を発することができる現代だからこそ、日常的に詩の世界に触れ、自分や人の言葉に今一度ゆっくり耳を傾けることで、心のつながりを実感できるような場所になればと思う。

今回、併用住宅は2階建ての設計にした。住宅部の他に「詩」に関する各施設ー ①「屋外ギャラリー」②「詩集ライブラリー&テラス」③「著名詩人展示スペース」④「詩人アトリエ」⑤「文具屋」ーを設けた。

「連なり」による構成

今回の空間デザインでは、詩の世界観を体感できる建築のカタチを目指した。詩の考察を通して、詩の特徴と捉えたポイントをモチーフに建築の設計を試みた。

1つ目は、「連なり」による全体構成。詩は改行を通じて文と文の連なりを生み、その連鎖を通して全体の世界観を読者に伝えるものだと捉えた。そこで今回の設計では箱型の建築ではなく、あえて壁の「連なり」で空間を分割し、それを横断させることで空間全体を体感できるような構成を試みた。
2つ目は、異世界への奥行き感と没入感。詩は目に見える言葉を通して、目には見えない新しい世界への奥行き感と没入感を読者が各々感じ楽しむものだと捉えた。今回壁の連なりに開口部を設け、空間の横断を促すことで、建築内部で視覚的にも空間の奥行きを感じさせようと計画した。

また、ダイアグラムにもある通り、「連なり」を跨ぐ形で「詩」の各施設と住宅部を構成することで、緑道から建築へのアクセス、そして建築内部での交差を活性化し、全体として地域を繋ぐカタチを目指した。

緑道側の敷地に「詩」の各施設、奥に住宅部を計画した。1階の一番緑道側には、誰もが気軽に入って地域の人々の詩を歩きながら楽しめる「屋外ギャラリー」を設けた。また、道路に面する両端の敷地には、様々な詩集を手に取れる「詩集ライブラリー」と、それを自由に読める「詩集テラス」(2階)、また実際に、詩作に必要な紙や筆記具を揃えられる「文具屋」(1階&2階)を計画した。さらに内部には、自分で言葉を紡ぐことができるスペース「詩人アトリエ」、また著名な詩人の作品に触れられる「展示スペース」を設けている。

奥の住宅部からは、玄関・テラスや文具屋の店先を通して、「詩」の施設を訪れた人との交流が持てるほか、2階には緑道側への開口部を多く設けることで、住宅内部から施設と緑道の自然を眺められるよう計画した。

参考文献
谷川俊太郎『詩を書く』思潮社, 2006

齋史歩
東京都生まれ
早稲田大学教育学部卒業
広告制作会社にて4年間勤務した後、桑沢へ入学

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