代々木公園に佇む銭湯複合施設

代々木公園は原宿駅、代々木公園駅、明治神宮前駅、代々木八幡駅に隣接しており、近辺から多くの人が集まる場所である。また、代々木公園の位置する渋谷区は文化・芸術が盛んなだけでなく、近年はその多様性を認める様々な取組みを行って おり、日本で初めて同性愛者の婚姻関係に相当する証明書の発行を 始めた区でもある。この立地を生かし、スローライフ志向の強い代々木八幡近辺、カルチャー・アート・ファッションの発信地である原宿、渋谷、またその中間に位置する癒しの場である代々木公園の 特徴が合わさり、多様な人が集まることによって相乗効果が生まれる銭湯複合施設（銭湯＋飲食施設）を計画した。

外観デザインについて

外観はこの建物のキーワードである、「多様性と平等さ」を表現するため、円ではなく型にはめら れない歪な形を選んだ。また、屋根の流線型は周囲の環境を極力壊さないよう、大木を避けるような配置にした結果、こうした形となった。O と U で形作られる曲面になっている。

繋がるフラットな食卓

1F は受付、銭湯利用者用の休憩スペース、飲食施設、2F は銭湯となっている。1F は木々 に囲まれた窪地をイメージした室内となっており、屋根が広く突き出していることにより、 屋外スペースも利用できる形になっている。円形に配置された座席は徐々に親密なコミュ ニケーションができるように展開した。

厨房をシェアキッチンとして、多くの飲食店 が立ち並ぶ代々木八幡エリアのシェフが交代 で店を出すなどフレキシブルに使えるキッチンとした。また、それにより代々八幡近辺の 住民を呼び込むよう計画した。厨房にいるスタッフ、銭湯帰りのお客さん、公園散歩して いてふらっと入った人たちなど、様々な人がフラットにコミュニケーションを取れる空間 を目指した。

ジェンダーフリーなこれからの銭湯

2F は湯浴み着を着ての混浴銭湯となっており、個別に利用できる更衣室とシャワールーム を設置した。内風呂は建物を一周回るように計画されており、これによってその時々で違った景色を楽しめるようになっている。また、露天風呂は、あえて壁で囲むことによって空に目がいく空間にした。
多様な人々が利用する代々木公園の特色を汲み、これからの主流になるようなジェンダーフリーな銭湯を考えた。また、多くの人で行き交う原宿・渋谷方面から逃れた代々木公園の隅で緑を見つめながら、一人にな ることによって自分をリセットするような体験ができると同時に、誰かときた際にはより深い話をしたくなるような雰囲気の空間を目指した。