たゆたふ

森紗都子

3 Is A Magical Number

Magical Number 3 から出発し 私が辿りついたのは「揺れる」をデザインすること.
幼いころ 本を開けば アラビアンナイトに登場する魔法の絨毯やシンドバッドの船に乗ることができた.
空間を移動するとき それらは一体どんな揺れ方をしたのだろう.
揺られている時間 人はどんな気持ちになるのだろう.
心身の揺れが交わる時間と空間をつくりたいと考えた.
幼少期の記憶と好奇心から生まれた作品が「たゆたふ」.

空のなか 海のうえ どんな心地だろう?
   

3 から生まれる 揺れ方

この椅子の いちばんの特徴は「揺れる」構造*にある.
「たゆたふ」があちこちに揺れるという意味を指すように この椅子もあちこちへ揺れる. 私は”3”という数字から3点でバランスを取り合う「天秤」「ヤジロベエ」をヒントにした. ヤジロベエを2つ その支点同士を逆さにロープで吊るすとブランコのように揺れる. 体重も3点に分散される構造だ.

3面図
1.調整ロープ(縦に揺れる) 2.吊りあうロープ(横に揺れる) 3.後ろからみたとき

小舟の帆にもたれ 星をみる

この椅子はさらに ふたつの特徴を持つ. それは「座った時の目線の位置」「同形パーツの組立式家具」.
座った時の目線の位置は 星空を見上げる角度に設計. 長時間 星を眺められる姿勢を考え 座面から背面までを1枚の帆布を張ることで首への負担をなくした. 帆布の生地厚は6号を使うことで 成人男性でも安心して身を預けられる強さのある生地を選んだ.
前後のロープの長さをカラビナを使って調整することで 角度を自分でつくることができるのもこの椅子の面白いところ. パーツは同形の木板が4枚で簡単に組立・解体・運搬ができる. 環境と人体を配慮して 塗装はオスモカラーを選んだ.

シンプルなパーツで構成される
動画「たゆたふ」2分30秒

「たゆたふ」時空間

子どもの目, 大人の目, この星の目 その3つを行き来しながら制作に臨んだ. シンドバッドの船上の揺れから想起し(子どもの目) 星を眺める時空間をつくることで身体と心の揺れを感じやすくできると考えた(大人の目). 揺られ 想像する時空間は 自他を超えた未来の世代を案じるものになりうるだろう(この星の目).

改良前の椅子. 私も水俣で一緒に制作を行った.

3人でつくる

卒業制作を熊本県水俣市でつくりたい. 年末年始 コロナ禍で身動きが取れず 制作環境も安定せず苦しい日々が続いた. 皆が同じ状況のなかで 私の卒制への想いを形にするために最後まで全力で協力をして下さった金刺潤平さん(浮浪雲工房)緒方正実さん(緒方建具店)に心から感謝を申し上げます.

*構造については動画をご参考ください(動画 1分05秒〜)

森紗都子
鎌倉に生まれ育つ.
桑沢在学中に和紙・染織の水俣浮浪雲工房と出会い 水俣の土壌に宿る植物の生命力と個性に感動する. 植物の繊維に草木染めを施し 四季の移ろいや大地との繋がりを感じられるジュエリーブランド「おしゃら」を立ち上げる. 水俣と鎌倉を拠点に製作.

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