自己紹介本「NARRATIVE」

山本滉太

『NARRATIVE』(A4・アクリルハードカバー製本・2021)書籍

物語ることによって「として」を解体する。

「自分ごと」をつぶさに書き連ねました。その内容は、どれも具体的でとりとめもないことばかりです。
私は人と関わるなかで、大好きなとある瞬間があります。それはお互いのいびつさや具体性を共有できたときです。生まれて育った環境のことや幼い頃に感じていたこと、現在に至るまでのことを知ると、その些細な情報の集積によって、人のイメージが個人名として立ち上がってくる瞬間があると感じています。
一般的な人生というものは存在しません。誰もがみな具体的な人生を歩み、具体的な事情を身につけています。
物語ることによって、「男」とか「女」とか「先生」とか「デザイナー」とか、その人を括っているジャンルが解体され、また複雑につながっていく。そのような人が平準化されない体験を生み出していきたいと考えています。

インスタグラムの、もっと深いやつ

SNSが普及したことで、誰もが自分のアカウントを持ち、情報の発信者となりました。その中で自分のライフスタイルや視点、趣味嗜好を表現するインスタグラムは、ときに名刺のように機能することがあります。初対面の人でも、インスタグラムを見ると投稿された写真やフォローの欄から、気が合いそうかどうか、くらいは判断出来てしまうような気分になります。この本はいわば、そのもっと複雑な情報の集積です。
誰かの事を理解しようとしたり、誰かに自分を受け入れてもらおうとすることは、ときに時間と労力のかかる大変な作業です。それは場所も時代もかけ離れた誰かが書いた本に向かい合う姿勢と似ているような気がします。
その全てが必ず報われるというわけではありませんが、自分をさらけ出し、または誰かのことを深く知り、いびつさやコンプレックスをお互いに共有しそれらを面白がれる関係を築けたときには、何にも代えがたい喜びがあると思います。
スクロールされて流れていってしまう流動的なSNSに対して、定着力があり時間のかかる本という媒体を用いて、「物語る」人付き合いがあってもよいと考えています。
自分事を物語るすべてのラッパーにリスペクトを込めて。

山本滉太
1999年東京都八王子市生まれ。
2021年桑沢デザイン研究所卒業。

Image View

List View

Students
Archive

Image View

List View