作品について
私は人間社会に擬態しながら生きる羊をテーマに制作しました。
外見は人間として社会に適応しながらも、内側には本来の姿を抱えている存在です。
“装うこと”を通して、アイデンティティの境界と社会的同一化の構造を表現しています。
今回の制作では、羊が持つ柔らかさや丸みといったイメージを出発点にしつつ、単なる可愛さにとどまらない表現を目指しました。
毛並みの重なりや身体のフォルムから着想を得て、ボリューム感のあるシルエットや、層を感じさせる構造をデザインに落とし込んでいます。
1体目は、最も“羊らしさ”を可視化した衣装です。
丸みのあるシルエットとドット柄で羊の毛並みを象徴的に表現しました。
人間の衣服の形式を取りながらも、動物性を残すことで擬態の未完成さを示しています。
2体目は、社会に溶け込むために自己を覆いす姿を表現しました。
フードで顔周りを覆うことで匿名性を示唆しています。
羊のモチーフバッグは“内面の本質”を象徴し、外側との対比を強調しています。
3体目は最も人間社会に順応した衣装です。
トレンド性のあるカジュアルなシルエットで、完全に社会へ同化した状態を表現しました。
しかし裾のボリュームや質感に羊の要素を残し、完全な人間化ではない曖味さを持たせています。
4体目は、学校に通う子羊をイメージしています。
制服のようなきちんとしたシルエットで、人間社会の中で日常を過ごす姿を表現しました。
裾の羊モチーフは、自分らしさをさりげなく残しているポイントです。
sheepleは sheep と people を組み合わせた造語であり、一般的には“主体性を持たず群衆に従う人々”という批判的な意味で用いられます。
このようにsheepleという言葉は本来ネガティブなニュアンスを持ちますが、本作品ではそれを肯定的・中立的に捉え直しました。
社会に適応することは弱さではなく、生存のための選択でもある。
その曖味さや揺らぎを、衣服という媒体で表現しています。



