新宿の巨大な空虚は、都市の秩序からはみ出した営みによって支えられている。
新宿を舞台に、昭和の歴史が残るゴールデン街とネオンがギラつく歓楽街、そして西新宿の高層ビル群が一つの巨大な球体都市を築き上げている様子を表現した。
球体構造の中では、都市の機能が集結しているさなか、居住者の暮らしは3階級に分かれており、下層部には小さい木造住宅が密集するスラム、中層部には岩に穴を開けて暮らす一般住宅、上層部には高層ビルの中に富裕層の住戸がある。
球体都市の誕生には、以下のような背景がある。
現在から数百年間に渡り、新宿で過度に地下掘削工事が行われたことで、地盤が軟弱になり直径400mほどの巨大なシンクホールができる。
大規模な陥没に見舞われながらも新宿を復活させようとした人々は、シンクホールの内部から上に向かって新たな地盤を築き上げ、まずはゴールデン街のように、小さな木造の建物を密集させて建てていく。
さらにその上にも地盤が築かれ、歌舞伎町のネオン街のような歓楽街が増殖していく。
そして最上部には、都庁を含む高層ビル群が地盤に突き刺さるように建設される。
こうしてできた球体都市は、地面との接点が僅かでありながらもなんとか全体の均衡を保とうとするが、増殖していく建築物の重みと、都市の上層部による深層地下水の過剰な抜き取りによって、新たな地盤沈下の危機に見舞われている。
また、本作品では、自身のクラシックバレエの経験をもとに身体表現を通して感じたバランス感覚を、球体都市の構造のバランスと結びつけて考えた。
クラシックバレエを踊る人は、常にトウシューズの僅かなボックス部分の面積でバランスをとっている。その際には、脚で床を押していく下方向へ向かう力と、腹筋を使って引き上げていく上方向へ向かう力が強く働いている。そして横に広げる腕も、バランスの釣り合いを保つ役割を担っている。
トウシューズを履いている時に全身を使ってバランスを保っているように、球体都市は地面との接点が僅かでありながら、重心が傾かないよう、様々な建築がスクラップアンドビルドの連鎖によって共存していることで、全体の均衡が保たれ構造が成り立っている。



