1.身体の指紋、精神の指紋
2.一冊の本としての阿Q
1.私たちは指紋を選ぶことはできない。
しかし、読む本は自ら選ぶことができる。
本作では、指紋を先天的な身体のアイデンティティとして捉え、
読書という行為が精神的な自己を形成すると考えた。
写真とAI生成画像を併用し、読むことが「私」をつくる関係を視覚化している。
2.本作は「本そのものを阿Qという人物として表現する」ことを試みた装丁である。函には阿Qの帽子を想起させる素材を用い、寸法をわずかに小さくすることで本体が少し露出する構造とし、貧しさと不完全さを象徴した。表紙は装飾を施さず、背表紙の下部にのみ必要な情報を配置している。本文には赤い糸の入った紙を用い、皮膚の下に通う血管のような感覚を重ねた。三本の栞紐は弁髪を連想させる編み込みとし、全ページ袋綴じによって、阿Qの悲劇が個人の問題にとどまらず、時代や社会の中で生み出されたものであることを示している。



