都市を少し離れて眺めるための小さな居場所
私は人が集まる場所がずっと前から好きだけど、渋谷という街は三年間通っても好きになれなかった。
行き交う人の流れに押されるようにして、毎日体も心も疲れてしまう。
だからといってその街を嫌いになりたいわけでもないし、無理に好きになろうとしたいわけでもない。
だから少しだけ立つ場所を変えてみる。
人の流れの中から半歩外れて、街を眺めてみる。
すると、それまでただの混雑に見えていたものが、ゆっくり動く大きな生き物のように見えてきたり、建物の隙間や設備の裏側に、思いがけない静けさが潜んでいることに気づいたりする。
苦手なものを消してしまうことはできない。
だけど、眺める角度をほんの少し変えるだけで、そこに違う表情が現れることがある。
この作品では、渋谷の建物の隙間や設備の周辺など、人の流れからわずかに外れた場所に、小さな空間を寄生させるように設置することを考えた。
ダクトに紛れるような場所、建物の表面にフジツボのように寄生する場所、ビルとビルの隙間に身を置くような場所、都市の片隅に集まったゴミが巣のような形をつくる場所。
どれも街の表側ではなく、ふだんあまり意識されない裏側の風景から生まれている。
街に完全に溶け込むのでも、そこから逃げるのでもなく、少しだけ距離を取りながら街を見つめるための場所である。
人の流れから半歩外れたところで、街をもう一度、静かに見直してみる。
そしたらちょっとだけ、ほんとにちょっとだけ、おもしろがって見ることができるかもしれない。



