ORIAI kamiyama

吉田 一馬

歴史・文化の堆積を愉しむ散策路

Concept
渋谷区神山町は、明治期に茶園で栄えて以降、高級住宅が建ち放送局を中心に文化拠点になるなど、時代と共に街の様相も変化した。しかしそれは決して様変わりするものではなく、新たな感覚が刻々と「古き良き」に染み入り更新する、重層的な変化である。

街中でふと近くの街灯に目を遣ると、錆びたポールの途中から徐々に無数に重なりあったステッカーがその表面を覆っていく。緩やかな時間変化を感じさせつつ、渋谷を起点として更新され続ける文化的な堆積の表れであり、まさに新旧の文化が混交し、浸透させあう今日の神山町の在り方を象徴している。

本プロジェクトでは時間や文化を纏った「帯」とも言える街灯の特徴を活かし、茶園、邸宅街、カルチャービレッジとその時代ごとに折り合いをつけて歩んできた、神山の歴史・文化・気配を感じることのできる空間を目指した。


Diagram
敷地は松濤・富ヶ谷の住宅エリアへ続く坂道と代々木八幡・奥渋の商業エリアに面する街路の交差する場所である。2つの街路を帯と捉え、商住を織り合わせた第3の帯を出現させ、街の内外のコミュニティ・文化の要衝として機能させることとした。

1枚の帯は手を離した瞬間はらはらと落ちて層をなす。「歴史・文化の帯」であるこの建築もまた1枚の帯が翻り積層しながら商住の空間を形成していく。

「折り合い」という言葉には重なり合うイメージと同時に、一歩退いて譲歩する意味も含む。この建築でも各階層をずらして重ねる事で地上から最上階まで連綿と続く動線が生まれ、上下階での視線の交差と気配を共有していく。テキスタイルをきっかけとした、神山町を訪れる人々にとっての文化的散策体験がここに生まれる。


Program
商空間は国内外のテキスタイルを扱うショップとショールームを、住空間はショップオーナー2世帯分の住宅を設計の想定とした。地下1階にはカフェスペースがあり、奥の客席上方には1階 のギャラリーから吊り下がるテキスタイルの木漏れ日が緩やかな時間を演出する。

中2階〜2階 は居住者の生活空間を兼ねたショールームで、昼は来訪者が行き交い、営業後はオーナー宅のLDKとなる、昼夜で公私織り合う空間である。

上階の住居と同様、商材である布が各空間の間仕切りとなり、「布の道」を通り抜けながらテキスタイルの新たな可能性を、売り手・買い手が共に実験・提案・体験できる空間となっている。

吉田 一馬
2019 Completed MFA, Graduate School of Fine Arts, Tokyo University of the Arts
-2024 Curatorial assistant at Bunkamura Museum of Art
2026 Graduated from Kuwasawa Design School

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