谷崎潤一郎『卍』

花田いちご

鮮やかな色彩表現を再現する

谷崎潤一郎の『卍』の中でも魅力を感じた色彩表現を、カバーと本体表紙に取り入れた。本作品は昭和の女学生同士の同性愛を描いており、当時流行であった銘仙が作品中に登場することから、カバーは派手で若々しい印象になるよう制作した。作中でヒロインがシーツを被り自身を観音像に見立てるシーンがあることから、本体表紙は白い布地に赤い刺繍を施して純潔さや処女性を表現した。本文は初版の文字組からかけ離れないよう、筑紫Aオールド明朝を使用しゆったりと組んだ。上部の花は「あなたを酔わせる」という花言葉を持つダチュラで、主人公がヒロインに惹きつけられるごとに成長が進み、最後には開花する仕組みだ。また、私は『卍』の中でも女学生同士による手紙のやり取りのシーンを特に美しいと感じており、本文のヒントを元に寸法や絵柄などをデザインし、リソグラフで再現を試みた。

【参考文献】谷崎潤一郎『卍』(初版発行日:1950(昭和25)年5月20日/出版社:岩波文庫、岩波書店)

花田いちご

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