あまい記憶の追想から始める読書体験
『檸檬』は私にとって初めて理解を超えて共感できる近代文学作品であった。100年という時を経てなお読者の共感を招くのは、とりわけ鮮やかな色彩と繊細な心理描写にあろう。またそれらが『檸檬』のキャラクター、すなわち「らしさ」であると考えた。
作中には主人公が「幼時のあまい記憶」を懐かしむ描写がある。このとき、私はラムネ瓶から取り出したビー玉を小箱に集めていた幼い頃の記憶が蘇った。今回の卒業制作では、私自身の記憶から空間作品を制作した。文字を追いかけるのではなく、幼時の記憶を懐古する体験から読書を始めてみるのはどうだろうか。






