世の中クソくらえ

松野直樹

『世の中クソくらえ』展示風景

生まれ育った大好きな日本を想い制作

桑沢デザイン研究所で二年生になったあたりから日本の社会問題について興味を持ち始めました。とあるブックフェアで『ほとんどない』ことにされている側から見た社会の話を。という一冊の本に出会ったことがきっかけでした。それから自分なりにいろいろな問題の記事などを読み、自分にも何かできることはないかと考えました。そこで思ったことが世の中を変えていくにはまず世論を作り上げていくこと、皆の問題意識や関心を上げる必要があるということです。
今回、私は若年層へこれからの日本のあり方について考えてもらうきっかけとなるような書籍の装丁とその書籍の販促ポスターを制作しました。

書籍は「社会編」「家庭編」「学校編」と若者に関係のあるテーマで三部構成になっています。例えば日本の若年層の死因トップが自殺であったり、学校での古い拘束や習慣、日本が先進国の中でジェンダーギャップ指数がかなり下位であることなど様々な社会問題についてデータを交えて記載してあります。自分が一冊の本から社会問題に関心を持ったように、この作品を見た誰か1人でも関心を持っていただけることを願っています。

あえてネガティブな表現をする

「クソくらえ」という印象の悪い表現をしたのには理由があります。この作品を見てくださったより多くの人の印象に残るため「ネガティブバイアス」という効果を用いりました。「ネガティブバイアス」とは、人はポジティブな出来事や情報よりも、ネガティブな出来事や情報の方に注意を向けやすく、また、それが記憶にも残りやすいという現象です。この効果は週刊誌などで使われています。
またそのネガティブな効果をより増幅させるため、綺麗で整ったデザインではなく情報量の多い攻撃的なデザインにしました。このような尖ったデザインができるのも学生のうちかもしれないなと思ったことも影響しているかもしれません。

『世の中クソくらえ』販促ポスター

ポスターでは書籍の中にあるトピックスをグラフィックに起こしました。「社会編」「家庭編」「学校編」とそれぞれテーマカラーを設定し、三部構成であることを表現しました。

最後に自分のお気に入りの一枚を紹介します。
テーマは「見ざる聞かざる言わざるクソくらえ」です。「見ざる聞かざる言わざる」は日光東照宮に神厩舎に掘られていることで有名な三猿ですが、これは8面にわたる三猿のストーリーの一部であることはご存知でしょうか。「見ざる聞かざる言わざる」はその中の二面・幼少期のの様子です。母猿から「悪いものは見ない聞かない言わない」という教えを守っている様子なのですが、私はその教育方針に少し違和感を感じました。三猿が掘られた当時はそれで良かったかもしれません、しかし、現代では逆によくないのではと思ってしまいます。最近でも危ないからと公園の遊具を撤去したり過保護な傾向がまだありますが、情報が巡り巡る現代で「見ざる聞かざる言わざる」は無理があります。それよりも悪いところも見せて、そのどこがいけないのか危険なのかを教えることの方が重要だと思うのです。

松野直樹
1998年8月19日生まれ 愛知県出身
2021年桑沢デザイン研究所卒業

Image View

List View

Students
Archive

Image View

List View