緑道の森 bath house
- 地域と楽しむお風呂の森 -

中村亜香里

(上から)地域の風呂/住宅の風呂/模型全体を俯瞰/コンセプト及び断面図

地域と住宅で景色を共有し合う2つのお風呂

課題敷地の北沢川緑道には、豊かな緑とせせらぎの小川がある。この緑道で都会の喧騒を忘れ、お風呂に入ることができたらどんなに癒されるだろうという思いを起点に、緑道でのお風呂のあり方を考えた。

まず、緑道の緑を敷地全体に引き込むことで建物のどこからでも緑を感じることができるようにした。そこに、個人住宅・共用部・地域施設の3棟を分棟で配置。そうすることで、共用部を介して個人住宅と地域施設とで合間の緑ある景色を共有可能となる。
また、大きな開口部を設けた壁を段差のある敷地に合わせて階段状に並べることで、従来の閉鎖的な空間ではなく、お風呂に入りながらも視線が先まで抜ける開放的空間が実現した。

このbath houseでは南側で地域の人々がお風呂に癒されているのと同時に、北側の個人住宅で住人が同じ景色を感じながらお風呂に入っている。緑豊かな景色を共有し合う2つのお風呂が1つの建築の中で共存し合うような関係を作り出した。

(上から)ダイアグラム及び平面図/各フロアパース

大きな壁が並列するレイヤー状の構成

壁を等間隔で並べ、内部・外部空間が交互に繰り返す構成とした。
幅3000mm間隔の細長い空間に各用途が入れ込まれている。細かく仕切られてはいるが、大きな開口部を設けることで、内と外の境界が曖昧となり1つの大空間が広がっているように感じられる。また、1000mmの段差を階段状に各フロアにつけることで視線を操作し、適度なプライベート空間も生み出している。

連なる方立で「広がりのある森」を再現

空間に広がりを持たせるために、モチーフとしてルネ・マグリットの「白紙委任状」という絵画を参照した。「白紙委任状」では騙し絵の技法で森が描かれており、手前の人間と奥の木々が入り混じり空間の前後感が失われていることが特徴となっている。bath houseでは空間の前後感を曖昧にするため、開口部に木の幹に見立てた方立を複数配置。それらをレイヤー状に重ねることで奥行きある「白紙委任状」の森のような空間を再現した。連なる方立と、合間に挟まる緑道の緑が重なることで抽象的な森が都心の地に生まれた。

中村亜香里
香港生まれ、東京育ち
早稲田大学卒業
大学時代に舞台美術制作に携わり、空間デザインに興味を持つ
会社員を経て桑沢へ入学

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